プロジェクト紹介

証券会社の戦略に先進技術で応える 苦労の積み重ねが成長の大きさに

プロジェクトの背景

従来、証券取引を利用されるお客さまとの接点は、「コールセンターへの電話」、「支店への来訪」、「お客さまの元へ営業担当が伺う」の3点がほとんどだった。そこで、三菱UFJモルガン・スタンレー証券がお客さまとの新しい接点(チャネル)として立ち上げたのが、「MUFGテラス」と呼ばれるWeb上のバーチャル店舗だ。アバターのフィンシェルジュ(金融コンシェルジュ)がお客さま一人ひとりの投資ライフをサポート。チャットやメールで気軽に投資相談ができたり、マーケットAIの自動応答で株価や市況などの情報を簡単に収集することが可能になる。Web上で問い合わせができるシステムは業界各社で取り組まれているが、証券会社のフィナンシャルアドバイザーへチャットで投資相談ができるインターネットサービスは新しい試み。2018年11月、先進技術を取り入れて開発が進められたこの大規模プロジェクトは、およそ2年越しでようやくリリースを迎えた。

MUFGテラスプロジェクトメンバー

プロジェクト発足のきっかけを教えてくださいプロジェクト発足のきっかけを教えてください

H.M.:スタートは2016年10月頃、コールセンターのシステムが老朽化を迎えたことがきっかけでした。単に改修するだけでなく、お客さまとの接点を増やすことを目的に、チャネルの拡大を含めて検討することになりました。

T.H.:単純な株の注文はすでにWeb上でおこなわれていますが、投資相談となると営業担当との対面が主流です。しかし、一人の担当者が受け持つことのできるお客さまの数には限りがある。お客さまにもっと気軽に相談してもらえる高機能なトレードサイトを検討する中で、バーチャル店舗の構想がはじまりました。

H.M.:バーチャル店舗の新サービス「MUFGテラス」は、お客さまが実際の店舗に来店しているイメージを大事にしています。アバターでバーチャルの金融コンシェルジュを用意して、お客さまにはその中から好きなキャラクターを登録していただく。見た目だけでなく性格もそれぞれ特徴を持たせているので、お客さまと専任の営業担当が対面しているような感覚で使っていただけるサービスです。

T.H.:実際の店舗だと、営業時間は平日の限られた時間だけですが、情報提供はAIの自動応答で24時間対応します。土曜日でも自宅で投資相談が可能になり、電話ができなくてもチャットですぐに回答でき、お客さまには便利なサービスとして活用いただけると思います。

H.M.:メールでの問い合わせやチャット機能は各社で取り組まれてはいますが、実際にフィナンシャルアドバイザーが回答する仕組みは、新しい試みです。

T.H.:このバーチャル店舗を経由して株の注文を受けることができれば、営業担当はほかの付加価値の高い業務に集中することができます。このプロジェクトは三菱UFJモルガン・スタンレー証券の業務部門が求めていることを正しく理解し、変化に対する柔軟性、スピード、そして正確さが求められました。

苦労したポイントはどこですか?苦労したポイントはどこですか?

H.M.:金融機関は個人情報の保護などセキュリティに対しては極めて慎重にならなければいけない世界です。とはいえ、世の中の動向を見ながらフィンテックなどの昨今の新技術にも追随していかないと、淘汰されてしまう。新しくはじめようとする業務と、新しい技術。その両方に取り組んでいくことがとにかく大変でした。

T.H.:今までは自前でシステムを構築していましたが、今回は当社でも初めて外部のシステムと連携させるASPを導入したことは、当プロジェクトの重要なポイントの一つです。クラウドを活用しているので既存の基盤に合わせたりする必要もなく、連携を図ることができます。ASP側がアップデートされることで、新機能を追加することも容易で、新技術に後れをとることがなくなるというメリットもあります。

H.M.:一方でこれまでASPはセキュリティの観点から積極的に利用してこなかったということも事実です。今回のシステム構築への導入にあたってはASP利用となるため、MUFGのセキュリティ部門にも相談するなど慎重に進めました。日本だけではなく海外の法律も絡んでおり、契約を結ぶにあたっては法務部から弁護士を通して相談してもらうなど、システム開発以外のところでの苦労も大きかったです。

T.H.:それに、「MUFGテラス」は連携するシステム数がとても多いです。テスト工程で問題が起きた時に、どのシステムが原因なのかを切り分ける作業にも時間がかかってしまいます。サイトとシステムをそれぞれ別のビジネスパートナーが担当していることや、1つの画面に複数のシステム担当が開発に携わっていることもあります。開発工程そのものより、こうした調整やテストに膨大な労力を費やしました。

H.M.:新しい技術を導入したことで、これまでのやり方ではうまくいかないことも多かった。関わる人やビジネスパートナーなども多岐にわたっていたので、コミュニケーションの取り方の重要性を改めて痛感しました。しかしながら、苦労した経験は、私を含め参加したメンバー個々人の成長につながりました。新しいことにチャレンジして取り組むことができることは、達成感ややりがいがあります。

プロジェクトを終えて、今のお気持ちは?プロジェクトを終えて、今のお気持ちは?

T.H.:社内システムだと、友人や家族にどんな仕事をしているか説明がしにくいんですけど(笑)、今回のようにお客さま向けのWebシステムだと、社外の人にも見てもらえるじゃないですか。成果としてわかりやすいことも達成感がありますね。今回はぜひいろんな人に見てもらいたいです。

H.M.:今後は海外と連携したプロジェクトも増えてくるので、言葉の問題も出てくると思います。積み重ねた基礎をしっかり持ちつつ、新しい技術をどう応用し発展させていくか。プロジェクトを円滑に進めるために、いかに良いコミュニケーションを築き、維持し続けるか。どうしたらみんながうまくいくのかを考えながら取り組んでいきたいですね。

学生へのメッセージをお願いします学生へのメッセージをお願いします

H.M.:私がMUS情報システムの良いと思う点は、ユーザーが構想を抱いている段階から、システムを構築してリリースするところまで、本当にスタートからエンドまでシステムの開発サイクルをすべて経験できるところですね。開発だけ、テストだけ、という仕事よりも、リリース後のお客さまの反応までわかる。そのやりがいを感じることができる会社だと思っています。

T.H.:私は中途入社で前職も開発会社でしたが、上流工程の設計の機会はわずかで、最初から最後までは携われないことがほとんど。一連の流れを担当したいと思ってMUS情報システムに入社したので、そこはH.M.さんの言う通り、本当にシステムの開発サイクルをすべて経験することができます。超上流工程から参画できるプロジェクトはたくさんあります。そういう経験したいという人には、ぜひ一度会社を訪れてほしいと思います。

H.M.:証券会社の戦略案件に携わることができて、それに対して新技術を組み合わせて取り組めるというのは、システム業界で働く人にとっては、やりがいがあって楽しい分野だと思います。