プロジェクト紹介

国内証券会社として初導入となるクラウド型社外システムと既存の顧客関係管理システムを高度に一元化させたハイブリッドCRMシステムを構築

プロジェクトの背景

昨今の金融業界を取り巻くビジネス環境の変化を受けて三菱UFJモルガン・スタンレー証券では現在、中長期の視点でお客さまのライフプランに沿ったアドバイスやサポートをトータルで行う『アドバイザリービジネス』へのシフトを精力的に進めている。
このアドバイザリービジネス実現の鍵を握るのが、一人ひとりのお客さまの意向を詳細に理解、把握するためのプロファイリングだ。お客さまのライフプランにあった有益な提案の実現には、年齢、性別、職業といった基本的な情報に加えて、家族構成、総資産、リスク許容度、各ライフステージにおける目標や潜在的なニーズなど、より広範な情報が必要となる。
こうしたビジネス環境の変化のなか、旧CRM(Customer Relationship Management=顧客関係管理)システムからより新しいビジネススタイルにあった次世代型CRMシステムの構築にチャレンジしたのが今回のアドバイザリーポータルシステムプロジェクトだ。

開発にあたっては、アドバイザリービジネスの先進国である米国での実績と、既存システムとの連携、そして将来的なアップデートへの対応力などを考慮し、国内証券会社としては初の導入となるクラウド型社外システムを採用し、社内の旧CRMシステムと完全にシームレスで連携する新しいハイブリッド型CRMシステムを完成させるという高度な目標の達成が求められた。

CRMシステムプロジェクト

これまでの経歴とプロジェクトにおける役割を教えてくださいこれまでの経歴とプロジェクトにおける役割を教えてください

N.K.:新卒で入社して、今年で入社6年目になります。現在はセールスサポートシステム部に所属しています。本プロジェクトで開発したシステムの保守を担当する部署となります。
入社1年目から開発期間が1年程度のプロジェクトに参画し、その後は開発期間が半年から1年規模のプロジェクトを3~4本やりましたから、6年で5本くらいのプロジェクトに関わってきたことになります。同時にプロジェクトで構築・リリースしたシステムの保守なども担当してきました。
当社では大小さまざまなプロジェクトが常に動いているため、誰もが何かしらのプロジェクトを行いながら、保守などを担当しています。

今回のプロジェクトは、基礎検討を含めると開発期間がおよそ2年半でフェーズを2回に分けてリリースを行い、関連した延べ人数としても比較的規模の大きなプロジェクトでした。

その中で私に課せられた役割は、今回採用したクラウド型社外システムの開発とその進行管理でした。

プロジェクトでは具体的にはどのような開発を担当したのでしょうか?プロジェクトでは具体的にはどのような開発を担当したのでしょうか?

N.K.:三菱UFJモルガン・スタンレー証券が標榜するアドバイザイリービジネスへのシフト実現・サポートする次世代型のCRMシステム構築が命題でした。
アドバイザリービジネスへのシフトというのは、お客さまとの関係を、これまでの単一の取引ごとのやりとりから、お客さまのライフプランを踏まえた中長期的なプランニングとその実現に必要なアクションをともに実行していくという関係に変えていこうというものです。
これにはお客さまの背景にあるもの、つまりお客さまの世帯全体の管理ができるプロファイル情報を扱えるシステムである必要があります。
あとはいつまでにどれだけのお金が必要となるから、それをどう実現していくかのゴールを管理することも必要となります。この年にはお子さまが大学に入学されるので、それまでに教育資金をいくら用意しておくとか、現在世帯で保有している資産のポートフォリオがこうなっているから使うべき時期までにいくらを流動化しておく必要がある、みたいなゴールですね。また、資産を運用する際にお客さまがどれくらいのリスクを許容するかなどの情報もプランニングには非常に重要な要素となってきます。
もともとお客さまのプロファイル情報は、社内の旧CRMシステムで管理していたのですが、その情報をもっとわかりやすく簡易に見ることができて、簡易に利用できるようにするために、今回導入したクラウド型社外システムに移管する開発を行いました。

苦労したポイントはどこですか?苦労したポイントはどこですか?

N.K.:大きくわけて4つあるのですが、1つ目は処理速度の問題です。
クラウドシステムは自社内の環境よりは外的な要因で遅くなる、使えなくなる、というリスクが高くなります。これはシステム側の視点で見れば、クラウドを使う以上ある程度は仕方のないことなのですが、ユーザー側からしてみたら、これまでできていたことができなくなるというのは当然許容しがたいことになります。
これを解決するために処理するデータの量を調整したり、処理の時間帯を工夫したりと、あれこれとチューニングするのにかなり苦労しました。

2つ目はセキュリティですね。
クラウド環境を利用する場合、これまで社内環境に置いていた顧客情報を社外に出す必要があります。これにはクラウド環境に持っていくためのセキュリティを強固にするということと、クラウド環境に持っていったあとのセキュリティを強固にするという両方の対応が必要となり、これが結構たいへんでした。
とくに今回採用したクラウドシステムのデータ暗号化については、導入当時は国内での利用実例がなかったため、いろいろと勉強しつつ、注意深く導入しなければならず、苦労しました。

3つ目はプロジェクト内でのコミュニケーションです。
今回のプロジェクトには大小合わせて20強のシステムが関わっていて、それぞれのシステムに開発チームがあり、さらにその先にビジネスパートナーのメンバーがいるという構造となっていました。さすがにチームが20もあれば認識の齟齬なども頻繁に生じますし、情報連携が遅いなどのクレームもあがってきます。こうした規模の大きなプロジェクト特有のたいへんさが結構ありました。
プロジェクト発足当時はまだweb会議は一般的ではなく、対面での会議が主流でしたので、とりあえず顔と名前を一致させるためにコミュニケーションをとることから始めました。顔見知りになっておけば、何か起きた時にも頼みやすくなりますし、その人の性格みたいなものを踏まえてお願いしたりできるようになるからです。

4つ目はUIの開発ですね。
システム側としての一般的な作業の流れは、モノを作って、テストをして、できたものをユーザーに確認するという流れなのですが、画面設計みたいなものはそれをやっていると突拍子もないところでどんでん返しが起きて全部やり直しになるリスクが高くなります。
それを避けるためにこのプロジェクトではまず簡易的な画面のサンプルを作って、事前にユーザーと共通認識を作っておくという方法をとりました。画面がたくさんあるのでサンプルを作成するのもたいへんだったのですが、おかげで出来上がってからの認識の齟齬は起こりませんでしたね。

プロジェクトを終えて、今のお気持ちは?プロジェクトを終えて、今のお気持ちは?

N.K.:振り返ってみればやはりたいへんでしたね。期間が長かったので…。
プロジェクトに関わっている間はずっとプロジェクトのことが頭にありますし、いろいろな問題が毎日起こったりするのでそれなりに苦労しました。
でも、開発期間が長いプロジェクトで、相当な投資もして、全社員が使うシステムを大幅に変更したのですが、リリース後に大きな不具合もなかったですし、現状あがってきている改善の要求も、きちんと使って頂いているからこそあがってくるような内容ばかりなので、ちゃんと使ってもらえているんだなぁという実感はあります。
現場のビジネスに少しは寄与できているという達成感を大いに感じていますね。

就活生へのアドバイスをお願いします就活生へのアドバイスをお願いします

N.K.:まず軸をブラすことなく活動するということですね。
就活にあたっては最初に自己分析をして、自分の強みや弱みを捉えておくと思うのですが、そこで出した軸は絶対にブラさない方がいいという意味です。
活動をしていると面接官との会話やグループディスカッションなどの影響を受けて、途中で自分の分析が甘かったかなとか、もっと違う分析をした方がよかったかな、などと思うことが多々あると思うのですが、そのたびに自分の強みや弱みをずらしていってしまうと、どんどんずれてしまって自分の本質とあわなくなってしまうことがあると思うからです。

細かな言い回しなどはもちろんどんどん改善していいのですけれど、本質的な部分は変えずにやり切った方がいいのではないかと個人的には思っています。
あと、最近の就活は基本全部webだと思います。面接などもそうだと思うのですが、対面で人と話すという機会が圧倒的に少ないのではないでしょうか。
実際に会社に入ったら、人と話す、コミュニケーションをとる、ということは絶対に必要で、それができるかできないかで結構差が出る気がしますので、学生の間は意識的に人と話す時間を作って、そこで自分の思いや考えをきちんと言語化できるように練習しておくと良いと思います。